Ein Notizbuch 2

人々の言葉を記録し、引き継ぐためのブログ
 
不思議な国シリア
篠山紀信氏の『シルクロード』靴蓮

1枚目が夜明けの淡い紫紅色に染まる、砂漠に点在するパルミラ遺跡、
2枚目が朝日が舞台のライトのように当たって赤茶色に輝く砂漠と遺跡。
3枚目は、同じくひたすら砂漠のパルミラ北西部死者の谷へと続く。

ところが、突然4枚目で、白い木の花と、緑が芽を出した畑の写真となる。

以下、篠山氏の文章からとその抜粋。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シリアという国は不思議な国で、前夜あれほど不穏にざわめいていた街が、
目ざめると一変して無人の街になっていたり、郊外に出るとそこは一面の
野菊の花が咲く楽園だったり、地中海のラタキアへ着くとそこは
うらさびれた哀感のある港町だったりする。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不毛の砂漠を旅していた写真家は突然目に飛び込んできた、オリーブの
木の下一面に黄色い花が咲き乱れている風景に見とれ、バスを降り、
草の中に寝転んだ。

ふと目を覚ますと、少し離れた花の中に、白い仔羊と一人の少女が
座っている。

とっさにバッグに手を突っ込んで、その手を止めて、彼は仔羊に語りかけ
始める。

「びらぼろぼろ」 「めへえめへえ」

少女も仔羊をあやし始めた。

「ジエラバア」 「ラビアベダ」

わからない言葉で、身振り手振りで話す時が流れる。
仔羊を追って立ち去ろうとする少女に、写真家はバッグから
羊羹を取り出し差し出すが、彼女は受け取らない。

写真家は銀紙をやぶき中身を見せて、食べるまねをするが、
それでも彼女は手を出さない。

彼が大きな口を開けて、パクっと食べると、彼女は歯型のついたその
羊羹をそのままガブリと食べた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

えもいわれぬ笑顔で「おいしい」という意味の言葉を、わからない
言葉でいった。そして少女はやはりわからない言葉で「ありがとう」と
いうと、仔羊を追って、黄色い花の中へ消えた。

ぼくはそのときはじめて、写真を撮ることをすっかり忘れていた
ことに気がついた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

行ったことのないシリアと繋がった喜びを分けてもらって。
写真家に、「写真を撮らないでくれて、ありがとう。」という気持ち。 Vielen Dank !





| Till*eulenspiegel | シルクロード-die Seidenstrasse | 14:21 | comments(0) | trackbacks(0) |

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